取引先からの支払いが遅れる。発注のときに条件が示されない。フリーランスがこうしたトラブルに直面したとき、根拠になる法律があります。2026年1月、長く下請法と呼ばれてきた法律が取適法に改正されました。名前を聞いて戸惑った人もいるはずです。何がどう変わり、フリーランスにとってどの法律が関係するのかを整理します。
下請法から取適法へ何が変わったか
2026年1月1日、下請代金支払遅延等防止法が改正され、名称が中小受託取引適正化法、通称「取適法」に変わりました。
呼び方も改められ、これまでの「親事業者」は委託事業者、「下請事業者」は中小受託事業者と呼ばれます。名称が変わっただけでなく、対象と規制の中身が広がったのが今回の改正です。主な変更点は次のとおりです。
取適法の主な改正点
- 対象の線引きに従業員数の基準が加わった(製造委託等で常時使用する従業員が300人、役務提供委託等で100人を超える事業者などが委託側として対象に入る)
- 手形による支払いが禁止された(紙の約束手形や小切手は2027年3月末までに廃止される)
- 通常の対価より著しく低い価格を定める買いたたきが、あらためて禁止された
- 中小受託事業者からの価格協議の求めに応じず、一方的に代金を決めることが禁止された
出典:2026年1月から下請法が「取適法」に|政府広報オンライン
これまでは資本金だけで線引きされていたため、資本金が小さくても従業員の多い大きな会社は規制から外れることがありました。従業員基準が加わったことで、その抜け道が狭まります。
手形払いの禁止も、受け取る側には大きな意味があります。手形は現金化までに時間がかかり、受託側の資金繰りを圧迫しがちでした。現金や振込が基本になることで、働いた分を早く確実に受け取りやすくなります。発注側への規制が一段と強まり、立場の弱い受託側を守る方向に踏み込んだ改正です。
取適法とフリーランス新法はどう違うか
名前が下請法でなくなったことで、自分は守られるのかと不安になるかもしれません。結論から言うと、従業員を雇わず個人で仕事を受けるフリーランスを直接守るのは、引き続きフリーランス新法です。2つの法律は、守る相手と入口が違います。
| フリーランス新法 | 取適法 | |
|---|---|---|
| 主な対象 | 従業員を雇わず個人で受託する人 | 資本金や従業員数で線引きされる事業者間の取引 |
| 委託側に課す主な義務 | 取引条件の書面明示、報酬の期日内の支払い | 代金の支払遅延の防止、手形払いの禁止、買いたたきの禁止 |
| 施行 | 2024年11月 | 2026年1月(旧下請法を改正) |
フリーランス新法は、発注事業者に取引条件の明示や報酬の期日内の支払いを義務づけ、7つの禁止行為を定めています。7つの禁止行為には、いったん決めた報酬を一方的に減らすことや、受け取りを不当に遅らせることも含まれます。取適法が事業者間で買いたたきや一方的な代金決定を禁じたのと同じ考え方が、フリーランス新法にも通っています。個人で活動するフリーランスがまず確認するのは、取適法ではなくフリーランス新法です。新法の7つの禁止行為や相談窓口はフリーランス新法の禁止行為と相談窓口で整理しています。
どちらの法律が自分に効くか
2つの法律は、対象の入口が違うだけで、どちらも立場の弱い受託側を守るためのものです。自分にどちらが効くかは、働き方の規模で見分けられます。
- 従業員を雇わず、個人で仕事を受けている間は、フリーランス新法が土台になる
- 事業を広げて従業員を雇ったり、法人化して取引の規模が大きくなったりすると、取適法の対象に入る場面も出てくる
多くのフリーランスは前者にあたり、まず確認するのはフリーランス新法です。たとえば、支払いが約束の期日を過ぎても振り込まれない、発注のときに金額や納期が示されない、契約のあとで一方的に報酬を減らされた、といった場合は、フリーランス新法を根拠に発注先へ確認できます。
困ったときの相談先
トラブルになったとき、自分一人で抱える必要はありません。国は、フリーランスが無料で相談できる窓口として「フリーランス・トラブル110番」を設けています。弁護士に相談でき、話し合いの仲介まで頼めます。発注側の行為がフリーランス新法に違反する疑いがあれば、公正取引委員会や厚生労働省の申出窓口に申し出ることもできます。
法律の名前が変わっても、守られる仕組みがなくなったわけではありません。どちらの法律が自分の取引に効くかと、どこに相談できるかを知っておくと、条件が不利なときに声を上げる足場になります。
※本記事は2026年6月時点の公正取引委員会・政府広報オンライン等の公表資料に基づいています。取適法の対象範囲や従業員基準の詳細は、公正取引委員会のガイドブックをご確認ください。

