フリーランスは開業届を出すべき?判断基準と手続きの手順を解説

フリーランスは開業届を出すべき?判断基準と手続きの手順を解説
フリーランスの読みもの編集部
執筆
フリーランスの読みもの編集部
記事の執筆・編集を担当
西村 裕介
監修
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

フリーランスとして仕事を始めたものの、開業届を出すべきかどうか判断がつかないまま活動を続けている人は少なくありません。開業届は出さなくても仕事はできますが、出すことで使える制度や節税の選択肢が変わります。開業届の必要性から、メリットとデメリット、判断基準、書き方、提出後にやるべきことまで順を追って整理します。

目次
  1. フリーランスに開業届は必要か
  2. 開業届を出すメリットとデメリット
  3. 開業届を出すかどうかの判断基準
  4. 開業届の書き方と記入例
  5. 開業届の提出方法と提出先
  6. 開業届とあわせて出すべき届出
  7. 開業届を出した後にやること
  8. 継続的に活動するなら開業届の提出を検討しよう

フリーランスに開業届は必要か

開業届は、フリーランスとして活動するなら知っておくべき届出の一つです。ただし「出さないと仕事ができない」というものではありません。

開業届とは何か

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。個人が新たに事業を始めたことを税務署に届け出るための書類で、提出先は納税地の所轄税務署になります。 出典:A1-5 個人事業の開業・廃業等届出書|国税庁

提出期限は事業を開始した日から1ヶ月以内です。費用はかかりません。A4用紙1枚の書類で、記入項目もシンプルです。

出さなくても罰則はない

開業届を出さなくても、法律上の罰則はありません。届出をしていない状態でもフリーランスとして仕事を受け、報酬を得ることは問題なくできます。

ただし開業届を出していないと、青色申告を選択できません。白色申告のみとなるため、青色申告特別控除(最大65万円)を受けられないという実質的な影響があります。

また、確定申告の義務は開業届の有無にかかわらず発生します。所得が一定額を超えれば、開業届を出していなくても確定申告は必要です。

開業届を出しても変わらないことと、出すことで変わる制度を整理した図解。仕事や確定申告は変わらないが、青色申告・事業の証明・屋号付き口座が使えるようになる。出さなくても罰則はない

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

開業届を出していなくても仕事はできますが、出していないと使えない制度があります。フリーランスにとって制度を使えるかどうかは、手元に残るお金に直結する話です。まず開業届を出すと何が変わるのかを把握した上で、自分に必要かどうかを判断してみてください。

開業届を出すメリットとデメリット

開業届を出すかどうかを判断するには、メリットとデメリットの両方を把握する必要があります。自分の状況に当てはまるかどうかを確認しながら読み進めてください。

開業届を出す4つのメリット

1つ目は青色申告ができるようになることです。開業届を出して青色申告承認申請書を提出すると、青色申告を選択できます。青色申告では最大65万円の特別控除が受けられ、白色申告と比べて所得税の負担を大きく減らせます。 出典:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

2つ目は小規模企業共済に加入できることです。小規模企業共済はフリーランスや小規模法人の役員が使える退職金制度で、掛金は月額1,000円から70,000円まで500円単位で設定できます。掛金の全額が所得控除の対象になるため、節税しながら将来の資金を積み立てられます。加入には開業届の控えが必要です。 出典:小規模企業共済|独立行政法人 中小企業基盤整備機構

3つ目は屋号付きの銀行口座を開設できることです。開業届を出すと、屋号を使った事業用口座を金融機関で開設できます。プライベートと事業の入出金を分けることで、帳簿づけが楽になり、確定申告時の経費整理も効率的になります。

4つ目は事業の証明として使えることです。開業届の控えは、個人事業主として活動していることの公的な証明書になります。補助金や助成金の申請、保育園の就労証明、事業用クレジットカードの申請など、さまざまな場面で提出を求められることがあります。

開業届を出すデメリットと注意点

1つ目のデメリットは失業手当を受給できなくなる可能性があることです。会社を退職してフリーランスになる場合、開業届を出すと「就職の意思がない」と判断されることがあります。雇用保険の失業手当(基本手当)を受給できなくなるケースがあるため、退職後に失業手当の受給を予定している人は、受給が完了してから開業届を出す方が得策です。

2つ目は家族の健康保険の扶養から外れる場合があることです。配偶者や家族の健康保険の被扶養者になっている場合、開業届を出すと「自営業者」として扱われ、扶養の条件を満たさなくなることがあります。扶養の判定基準は健康保険組合ごとに異なるため、開業届を出す前に加入している健康保険組合に確認しておくと安心です。

いずれのデメリットも、すべてのフリーランスに当てはまるわけではありません。退職直後でなく、かつ扶養に入っていない人にとっては、実質的なデメリットはほぼありません。

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

デメリットとして挙げられる2つは、該当する人としない人が明確に分かれます。感情で判断する前に、自分が失業手当の受給予定があるか、誰かの扶養に入っているかを確認すれば、開業届を出すかどうかの判断はシンプルになります。ハローワークや加入中の健康保険組合に問い合わせてみてください。

開業届を出すかどうかの判断基準

メリットとデメリットを理解した上で、自分の状況に合った判断をすることが大切です。

開業届を出すかどうかを、フリーランスを続けるか、失業手当や扶養に関係するかの2軸で判断する図解。「続ける×該当なし」なら出すメリットが大きい

出した方がいいケース

以下に当てはまる人は、開業届を出すメリットが大きくなります。

  • フリーランスを本業として継続的に活動する予定がある
  • 年間の事業所得が48万円を超える見込みがある(確定申告が必要になる水準)
  • 青色申告特別控除(最大65万円)を活用して節税したい
  • 小規模企業共済に加入して将来の退職金を積み立てたい
  • 屋号付きの事業用口座で入出金を管理したい

フリーランスとして継続的に収入を得ていくなら、開業届を出して青色申告を選択する方が経済的なメリットは大きくなります

出さない方がいいケース

一方で、以下に当てはまる場合は開業届の提出を見送る方が合理的です。

  • 退職直後で、失業手当の受給を予定している
  • 家族の健康保険の被扶養者であり、扶養から外れたくない
  • フリーランスの仕事が単発・一時的で、継続する予定がない

失業手当を受給中の場合は、受給完了後に開業届を出しても遅くありません。扶養については、加入先の健康保険組合に開業届を出した場合の扱いを事前に確認してみてください。

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

判断基準は結局のところ、フリーランスを継続するかどうかと、失業手当・扶養に該当するかどうかの2軸です。継続的に活動するつもりで、失業手当も扶養も関係ないなら、出さない理由はほぼありません。自分がどちらに当てはまるかを確認するところから始めてみてください。

開業届の書き方と記入例

開業届は記入項目が少なく、特別な知識がなくても作成できます。

開業届の入手方法

開業届は以下の方法で入手できます。

  • 国税庁のWebサイトからPDFをダウンロードして印刷する
  • 最寄りの税務署の窓口で直接受け取る
  • freee開業やマネーフォワード クラウド開業届などのオンラインサービスで作成する

オンラインサービスを使うと、質問に答えるだけで開業届と青色申告承認申請書をまとめて作成できるため、記入ミスを防ぎやすくなります。

記入項目と書き方のポイント

開業届の主な記入項目は以下の通りです。

記入項目書き方のポイント
納税地自宅の住所を記入(自宅で仕事をする場合)
氏名・生年月日本名を記入。マイナンバーも記載が必要
職業具体的に記入(Webデザイナー、ITエンジニアなど)
屋号任意。決まっていなければ空欄でも提出可能
届出の区分「開業」にチェックを入れる
所得の種類「事業所得」を選択
開業日事業を開始した日付を記入
開業届に伴う届出書の提出の有無青色申告承認申請書を同時提出する場合は「有」

職業欄は、個人事業税の税率に影響する場合があります。自分の職業がどの業種区分に該当するかを、都道府県の個人事業税のページで確認しておくと確実です。

屋号は後からでも変更できるため、開業届の提出時に無理に決める必要はありません。

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

開業届の記入自体は10分もかかりません。迷いやすいのは職業欄と屋号ですが、職業は自分の業務内容をそのまま書けばよく、屋号は空欄でも問題ありません。まず国税庁のサイトでPDFをダウンロードして、記入項目を一度確認してみてください。

開業届の提出方法と提出先

開業届を作成したら、納税地の所轄税務署に提出します。

3つの提出方法

方法特徴
e-Tax(電子申告)マイナンバーカードがあればオンラインで完結。税務署に行く必要がない
郵送所轄税務署宛に郵送。控えの返送を希望する場合は返信用封筒を同封する
窓口提出税務署の窓口に直接持参。不明点をその場で質問できる

e-Taxは24時間提出可能で、提出後すぐに受付が完了します。郵送や窓口提出の場合は、控えに収受日付印を押してもらうことで、提出日の証明になります。

提出時の持ち物と注意点

窓口で提出する場合の持ち物は以下の通りです。

  • 開業届(記入済み)
  • 開業届の控え(自分用のコピー)
  • マイナンバーカード(またはマイナンバー通知カード+本人確認書類)
  • 青色申告承認申請書(同時提出する場合)

開業届の控えは必ず手元に残しておいてください。小規模企業共済の加入申請や、銀行口座の開設時に提出を求められます。郵送の場合は控えと返信用封筒を同封すれば、収受印が押された控えが返送されます。

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

提出方法はどれでも結果は同じです。手軽さで選ぶならe-Tax、不安があるなら窓口で直接出すのが確実です。どの方法を選んでも、控えを手元に保管しておくことだけは忘れないでください。

開業届とあわせて出すべき届出

開業届を出すタイミングで、あわせて提出しておくべき届出があります。特に青色申告承認申請書は、提出期限を過ぎると初年度から青色申告を選べなくなるため注意が必要です。

開業届と青色申告承認申請書を同時に提出する重要性を示した図解。開業届は事業開始から1ヶ月以内、青色申告承認申請書は期限に注意。同時提出がいちばん確実

青色申告承認申請書

青色申告を選択するには、開業届とは別に青色申告承認申請書の提出が必要です。提出期限は、1月16日以降に開業した場合は事業開始日から2ヶ月以内、1月15日以前に開業した場合は3月15日までです。 出典:No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁

開業届と青色申告承認申請書は同時に提出できます。提出期限が異なるため、開業届を出す際にあわせて提出しておくのが最も確実です。

青色申告を選ぶと、最大65万円の特別控除に加えて、赤字の3年間繰り越しや家族への給与の経費計上(青色事業専従者給与)など、白色申告にはない制度を利用できます。

その他の届出

フリーランスとして活動する上で、状況に応じて検討する届出もあります。

届出対象提出先
事業開始等届出書個人事業税の届出(都道府県による)都道府県税事務所
給与支払事務所等の開設届出書従業員やアルバイトを雇う場合所轄税務署

1人で活動するフリーランスの場合、開業届と青色申告承認申請書の2つを出せば、当面の届出は完了です。

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

青色申告承認申請書は提出期限を過ぎると、その年は青色申告を選べません。開業届を出すと決めたら、青色申告承認申請書も同じタイミングで提出してください。2枚の書類を一度に出すだけで、初年度から最大65万円の控除が使えるようになります。

開業届を出した後にやること

開業届の提出はゴールではなく、フリーランスとしての事業運営のスタート地点です。提出後に早めにやっておくべきことを整理します。

事業用の口座とクレジットカードの準備

開業届を出したら、事業用の銀行口座を開設します。プライベートの入出金と事業の入出金を分けることで、帳簿づけの手間が大幅に減ります。

屋号付きの口座は、開業届の控えを金融機関に提示することで開設できます。ネット銀行でも屋号付き口座に対応しているところがあります。

事業用のクレジットカードも用意しておくと、経費の管理が楽になります。会計ソフトと連携すれば、カードの利用明細から自動で仕訳が作成されます。

会計ソフトの導入と帳簿づけの開始

青色申告を選択した場合、複式簿記による帳簿づけが必要です。クラウド会計ソフトを導入すれば、簿記の知識がなくても日々の取引を記録できます

帳簿づけは売上や経費が発生したタイミングで記録するのが理想です。まとめて入力しようとすると、領収書の紛失や記憶の曖昧さで正確な記録が難しくなります。

開業直後のうちに会計ソフトを導入し、銀行口座やクレジットカードを連携させておくと、確定申告の時期に慌てずに済みます。

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

開業届を出して終わりにすると、確定申告の直前に帳簿づけをまとめてやることになります。経費の記録は後回しにするほど手間が増えます。開業届を出した日に会計ソフトの登録まで済ませてしまうのが、最もストレスの少ない進め方です。

継続的に活動するなら開業届の提出を検討しよう

開業届について、改めて要点を整理します。

  • 開業届は事業開始から1ヶ月以内に税務署へ提出する届出で、費用はかからない
  • 出さなくても罰則はないが、青色申告を選択できないなどの実質的な影響がある
  • メリットは青色申告65万円控除、小規模企業共済、屋号口座、事業証明の4つ
  • デメリットは失業手当の喪失と扶養判定への影響。該当しない人には実質的な影響なし
  • 開業届と青色申告承認申請書は同時に提出するのが最も確実
  • 提出後は事業用口座の開設と会計ソフトの導入を早めに済ませる

フリーランスとして継続的に活動していくなら、開業届を出して青色申告を選択する方が、税制上の選択肢は広がります。まず国税庁のサイトで開業届のPDFを確認し、自分の状況でメリットがあるかどうかを判断するところから始めてみてください。

西村 裕介
西村 裕介(ファイナンシャルプランナー)

開業届を出すかどうかは、フリーランスとして続けるかどうかの判断とほぼ同じです。続ける意思があるなら、出さないことで使えない制度がある分だけ損をします。国税庁のサイトで開業届と青色申告承認申請書の様式をダウンロードして、記入項目を確認するところから始めてみてください。


※本記事の内容は2026年5月時点の情報にもとづいて執筆しています。税制や届出に関する制度は変更される場合があります。最新情報は国税庁公式サイトや中小企業基盤整備機構の公式サイトをご確認ください。

西村 裕介
監修
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)
正社員として働きながら、コンサルティングやメディア事業を手がける法人を経営し、AFP認定ファイナンシャルプランナーとして個人でも活動中。副業フリーランスの立場から、独立や副業を考える人に役立つ情報を発信している。
フリーランスの読みもの編集部
執筆
フリーランスの読みもの編集部
記事の執筆・編集を担当
公的データに基づく制度や数値の記載を徹底し、商品・サービスは編集部が本当に良いと判断したものを紹介。専門資格を持つ監修者と連携し、フリーランス・個人事業主の判断材料となる情報をわかりやすくお届けします。