フリーランスの節税は何ができる?課税所得を下げる方法を解説

フリーランスの節税は何ができる?課税所得を下げる方法を解説
フリーランスの読みもの編集部
執筆
フリーランスの読みもの編集部
記事の執筆・編集を担当
西村 裕介
監修
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

フリーランスとして稼げるようになると、次に気になるのが税負担です。裏ワザを探して検索しても、手段が並ぶばかりで「自分は結局何から手をつければいいのか」がわからない、という人は少なくありません。節税の本質はシンプルで、課税所得を合法的に下げることに尽きます。経費の計上から青色申告、所得控除や共済、法人化までの手段を優先順位で整理し、自分が次に何をすべきかを判断できるところまでまとめました。

目次
  1. フリーランスの節税の考え方
  2. 課税所得を下げる方法
  3. 将来に備えながら節税する
  4. 法人化で節税できる場合
  5. 自分に合う節税から順に始めよう

フリーランスの節税の考え方

個別の手段に入る前に、節税が何をすることなのかを押さえておきます。仕組みがわかると、どの手段が効くのかを自分で判断できるようになります。

節税は課税所得を下げること

節税とは、税金の計算のもとになる課税所得を、合法的に小さくすることです。課税所得は、収入から必要経費と所得控除を引いた金額です。

フリーランスの所得税と住民税は、どちらもこの課税所得をもとに計算されます。所得税は課税所得が大きいほど税率が上がる累進課税で、5%から45%まで7段階に分かれています。

出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

住民税は、課税所得のおよそ10%です。

出典:総務省|地方税制度|個人住民税

課税所得を下げれば、所得税と住民税の両方が同時に減ります。節税の手段がいろいろあるように見えても、やっていることはすべて、経費や控除で課税所得を下げることに集約されます。節税とは、収入を減らすことではなく、課税所得を合法的に下げて手元に残るお金を増やすことです。所得を隠す脱税とは、まったく別物です。

やりすぎは逆効果になる

課税所得を下げればよいからといって、何でも経費にすればよいわけではありません。節税には、注意すべき落とし穴があります。

節税のために必要のないものを買えば、税金は減っても、それ以上にお金が出ていきます。たとえば30万円を使って税金が9万円減っても、手元からは差し引き21万円が消えます。節税で戻るのは使った金額の一部であって、全額ではないのが基本です。

事業と関係のない私的な支出を経費に入れるのは、節税ではなく脱税です。税務調査で否認されれば、加算税などの対象になることもあります。節税は、本当に必要な支出と使える制度の範囲で行うのが、手元のお金を最大化する近道です

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

節税の相談で最初に伝えるのは、税金を減らすこと自体を目的にしないでほしい、ということです。課税所得を下げれば税金は減りますが、そのために無駄な出費をすれば、残るお金はかえって少なくなります。大事なのは、もともと必要な支出や、将来につながる制度を使って課税所得を下げることです。まずは節税を「使ったお金が全部戻る魔法」ではなく、「課税所得を下げる工夫」として捉え直すところから始めてみてください。

課税所得を下げる方法

課税所得は、収入から必要経費と所得控除を引いて求めます。下げる手段は、経費の計上、青色申告、所得控除の3つが基本です。効果が大きく取り組みやすい順に見ていきます。

フリーランスが使える主な節税手段を、効果とまず手をつけるべき人で整理すると次のようになります。

手段課税所得を下げる効果まず手をつけるべき人
経費の計上すべてのフリーランス
青色申告白色申告のままの人
所得控除控除の記入漏れがある人
共済とiDeCo中〜大利益が安定してきた人
法人化利益が大きく残る人

この章では、最初の経費と青色申告、所得控除を順に見ていきます。共済やiDeCo、法人化は後の章で扱います。

経費を漏れなく計上する

課税所得を下げる出発点は、経費の漏れをなくすことです。事業のために使ったお金は、必要経費として収入から差し引けます。

出典:No.2210 必要経費の知識|国税庁

通信費や交通費、消耗品費など、事業に関係する支出は幅広く対象になります。自宅で仕事をしている場合は、家賃や光熱費のうち事業で使う割合を、家事按分として経費にできます。按分は、使用する面積や時間など合理的な基準で区分します。プライベートと事業が混じる支出は、業務に必要な部分を明らかに区分できる範囲で経費にできますまずは事業に使った支出を漏れなく記録し、経費を取りこぼさないことが、もっとも基本の節税です。経費にできる範囲や家事按分の考え方はフリーランスが経費にできるものと判断軸で整理しています。

青色申告特別控除を使う

確定申告を青色申告で行うと、課税所得をまとめて下げられる特典が使えます。代表が青色申告特別控除です。

複式簿記で記帳し、e-Taxで申告するなどの要件を満たすと最大65万円、要件によっては55万円や10万円を所得から差し引けます。

出典:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

青色申告には、ほかにも節税につながる特典があります。事業が赤字になった年の損失を、翌年以後3年間にわたって繰り越せます。

出典:No.2070 青色申告制度|国税庁

生計を一にする家族に支払う給与を、届け出た範囲で経費にできる青色事業専従者給与も使えます。

出典:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

青色申告は、特別控除と赤字の繰越、家族への給与を一度にカバーする節税の土台です。白色申告のままなら、青色申告に切り替えるだけで課税所得を大きく下げられます。青色申告と確定申告の手順はフリーランスの確定申告のやり方と必要書類で整理しています。

所得控除を使い切る

経費とは別に、所得から直接差し引けるのが所得控除です。使える控除を漏れなく申告することが、そのまま節税になります。

国民健康保険料や国民年金保険料は社会保険料控除として全額が対象です。医療費が多い年の医療費控除や、配偶者控除や扶養控除など、家族の状況に応じた控除もあります。

出典:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁

ふるさと納税も使えます。寄附額のうち自己負担の2,000円を超える部分が、上限の範囲で所得税と住民税から控除されます。

出典:ふるさと納税での税額控除|総務省

iDeCoや共済の掛金も所得控除の対象ですが、将来の備えも兼ねるため次の章で扱いますまずは確定申告で、使える所得控除に記入漏れがないかを確認することが、手間をかけずにできる節税です

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

課税所得を下げる3つの手段には、取り組む順番があります。最初に経費の漏れをなくし、次に青色申告へ切り替え、そのうえで所得控除を使い切る、という流れが効率的です。とくに青色申告への切り替えは、特別控除だけで課税所得を最大65万円下げられるため、効果が大きい一手です。まだ白色申告の人は、青色申告承認申請書の提出から検討してみてください。経費と控除は、確定申告のたびに見直す習慣をつけると取りこぼしが減ります。

将来に備えながら節税する

節税には、ただ税金を減らすだけでなく、将来への備えと両立できる手段があります。掛金が所得控除や経費になりながら、お金が積み上がっていく制度です。

小規模企業共済とiDeCo

将来に備えながら課税所得も下げられる代表が、小規模企業共済とiDeCoです。どちらも掛金がそのまま控除になります。

小規模企業共済は、フリーランスが廃業や引退に備えて積み立てる、退職金代わりの制度です。掛金は月額1,000円から70,000円まで選べます。

出典:小規模企業共済制度について|中小企業庁

iDeCoは、自分で積み立てて運用する私的年金です。第1号被保険者の掛金上限は月額68,000円です。

出典:iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等|iDeCo公式

どちらも支払った掛金は全額が所得控除になります

出典:No.1135 小規模企業共済等掛金控除|国税庁

老後資金や退職金を準備しながら、その年の課税所得を下げられるのが大きな利点です。一方で、原則として途中で自由に引き出せないため、生活資金まで回すと資金繰りが苦しくなります。小規模企業共済とiDeCoは、将来の備えと節税を同時に進められる手段です。iDeCoや小規模企業共済を含む老後の備えはフリーランスの年金と上乗せ制度の選び方で整理しています。

経営セーフティ共済

取引先の倒産に備えながら節税できるのが、経営セーフティ共済です。中小企業倒産防止共済とも呼ばれます。

掛金は月額5,000円から200,000円まで選べ、総額800万円まで積み立てられます。支払った掛金は、必要経費や損金に算入できます。

出典:制度の概要 | 共済制度 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

取引先が倒産したときには、積み立てた掛金をもとに無担保で借り入れができます。掛金を経費にしながら、不測の事態に備えられるのが特徴です。ただし、解約して受け取る解約手当金は収入として課税されるため、出口での扱いも考えておく必要があります。経営セーフティ共済は、掛金を経費にしながら取引先の倒産に備えられる手段です

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

将来に備える制度は、節税のなかでも順番を意識したいところです。掛金が全額控除になる小規模企業共済とiDeCoは、老後資金づくりと節税を一度にこなせる優先度の高い手段です。ただし、いずれも資金が長く拘束されるため、まず生活防衛資金を確保してから始めるのが現実的です。経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備えつつ経費にできますが、解約時の課税まで含めて考えてください。無理のない掛金から始めるのが長続きのコツです。

法人化で節税できる場合

ここまでの手段を使っても税負担が重いと感じるほど利益が大きくなったら、法人化という選択肢が出てきます。会社にすることで、税負担を抑えられる場合があります。

法人化すると、利益を会社の利益と自分への役員報酬に分けられます。役員報酬には給与所得控除が使え、所得税は累進で上がる一方、法人税の税率は一定の範囲に収まります。利益が大きいほど、個人で抱えるより会社に分けたほうが税負担を抑えやすくなります。一方で、社会保険料の負担や設立と維持のコスト、事務の手間も増えます。

法人化は節税効果だけで決めるものではなく、利益の水準や事業の方向性とあわせて判断する選択です。個人事業のうちに使える節税を一通りやり切ってもなお利益が大きいなら、法人化が次の検討対象になります。法人化の目安やメリットとデメリット、手続きはフリーランスの法人化はいつから(年収の目安とメリット・デメリット)で整理しています。

西村 裕介
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ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

法人化は、節税の最終手段のように語られがちですが、順番としては個人でできる節税をやり切った後の選択です。経費と青色申告、所得控除、共済やiDeCoまで使ったうえで、それでも利益が大きく残るなら、法人化で税負担を抑えられる可能性が出てきます。ただし社会保険料や事務負担も増えるため、目安となる利益水準に近づいたら、税理士に法人化後の試算を依頼して損得を具体的に確かめてみてください。

自分に合う節税から順に始めよう

フリーランスの節税は、課税所得を下げるという一本の軸で整理できます。手段は多くても、効果と取り組みやすさで順番をつければ、迷わずに動けます。

  • 節税の本質は、経費と控除で課税所得を合法的に下げること
  • 節税のための無駄遣いは逆効果で、必要な支出と制度の範囲で行う
  • まず経費を漏れなく計上し、家事按分も活用する
  • 次に青色申告へ切り替え、特別控除と赤字の繰越を使う
  • 所得控除を使い切り、ふるさと納税も検討する
  • 余裕が出たら小規模企業共済やiDeCoで将来の備えと両立する
  • 利益が大きくなったら法人化を選択肢に入れる

最初の一歩は、直近の確定申告を見直して、取りこぼしている経費や控除がないかを確認することです。次に白色申告なら青色申告への切り替えを検討すると、効果の大きい順に手をつけられます。節税は一度に全部やる必要はなく、自分の利益の段階に合わせて一つずつ積み上げていくものです。

西村 裕介
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ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

節税で大事なのは、手段の多さに圧倒されず、効果の大きい順に一つずつ進めることです。多くの人にとって、経費の見直しと青色申告への切り替えが、最も手間あたりの効果が大きい二手になります。そこまで終えてから、所得控除の使い切り、共済やiDeCo、最後に法人化と広げていけば、無理なく税負担を下げられます。まずは直近の申告内容を一度見直し、次の申告で変える点を一つ決めるところから始めてみてください。


※本記事の内容は2026年6月時点の情報にもとづいて執筆しています。税率や控除額、各制度の掛金上限や要件は変更される場合があります。最新情報は国税庁・中小企業基盤整備機構・iDeCo公式サイト・総務省の公式サイトをご確認ください。

西村 裕介
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西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)
正社員として働きながら、コンサルティングやメディア事業を手がける法人を経営し、AFP認定ファイナンシャルプランナーとして個人でも活動中。副業フリーランスの立場から、独立や副業を考える人に役立つ情報を発信している。
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