フリーランスから正社員になるには?進め方と税金の手続きを解説

フリーランスから正社員になるには?進め方と税金の手続きを解説
フリーランスの読みもの編集部
執筆
フリーランスの読みもの編集部
記事の執筆・編集を担当
西村 裕介
監修
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

フリーランスとして働くなかで、チームで動きたくなったり、収入の波から離れたくなったりして、正社員に戻る道を考える人は少なくありません。出戻りは不利になる、空白期間とみなされる、と聞いて足踏みする人もいます。実際には、フリーランスの経験は転職で評価される材料になります。正社員になるまでの進め方から、廃業届や確定申告といった税金の手続き、戻る前に整理したい判断軸までをまとめました。

目次
  1. フリーランスから正社員に戻れるのか
  2. 正社員になるまでの進め方
  3. フリーランスをやめるときの税金の切り替え
  4. 正社員に戻る前に整理する判断軸
  5. 働き方は選び直せる

フリーランスから正社員に戻れるのか

正社員に戻れるのか、出戻りは不利ではないのか。まずは可否の不安から見ていきます。結論から言えば、戻る道は十分にあります。

出戻り転職は不利にならない

フリーランスから正社員への転職は、珍しいことではなくなっています。

とくに人手が不足している職種では、実務経験のある独立者は歓迎されやすい状況です。フリーランスとして関わってきた取引先が、そのまま社員として迎えるケースもあります。業務委託で実績を積んでから社員に切り替わる流れは、エンジニアやデザイナーなどで以前から見られます。応募の前に、付き合いのある取引先へ社員採用の枠がないかを当たってみる手もあります。

企業側も、独立経験のある人材を受け入れるケースが増えています。フリーランスの期間は、職務経歴のうえで空白ではなく、事業を営んでいた期間として説明できます。フリーランスとして働いていた期間は、無職のブランクではなく事業期間として扱えるため、引け目に感じる必要はありません。会社を辞めて独立し、また組織に戻る動き方は、キャリアの選択肢の一つとして定着しつつあります。フリーランスから正社員への出戻り転職は、不利な選択ではありません

フリーランス経験は転職で武器になる

フリーランスで身につけたものは、組織の中でも評価されます。

案件の見積りから納期の管理、取引先との折衝、1人で仕事を完結させる自走力。会社員として働くうえでも求められる力です。発注者の立場や事業全体を見て動いた経験は、社員として採用する側にとって魅力になることが多いです。フリーランスをやめて戻るのではなく、外で得た経験を組織に持ち帰る、と捉えると、面接でも前向きに語れます。フリーランスの経験は、正社員の採用市場で強みとして評価されます

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

正社員に戻ることを、フリーランスの失敗だと考える必要はありません。独立して事業を回した経験は、採用する側から見れば即戦力の証拠です。私の周りでも、独立と再就職を行き来しながらキャリアを伸ばしている人は珍しくありません。まずは引け目を手放して、自分が外で何を身につけたかを言葉にするところから始めると、転職活動の軸が定まります。

正社員になるまでの進め方

戻れるとわかったら、次は進め方です。職務経歴書の書き方、面接での伝え方、入社時の書類の3つを順に押さえます。

職務経歴書で実績を整理する

職務経歴書では、フリーランス期間の仕事を具体的に書き出します。

屋号や案件名だけを並べるのではなく、担った役割と成果を数字で示します。担当した業務、関わった規模、達成した数値を案件ごとに整理します。継続的に受けていた仕事は、在籍期間のようにまとめると伝わりやすくなります。書ききれないほど案件がある場合は、応募先の仕事に近いものを上に置きます。すべてを同じ熱量で書くより、強みが伝わる案件に絞って厚く書くほうが効果的です。何をしたかではなく、何を生み出したかを書くと、採用担当者が実力を判断しやすくなります。職務経歴書は、案件を役割と成果の単位で整理すると評価されやすくなります

面接で独立の理由を伝える

面接では、独立した理由と、いま組織で働きたい理由の両方を語ります。

独立を後ろ向きな話にせず、何を求めて独立し、何を得たかを率直に伝えます。そのうえで、なぜ今は組織で働きたいのかをつなげます。よく聞かれるのは、なぜ独立をやめるのか、組織でやっていけるのか、という点です。収入の波が理由だと答えるより、チームで大きな成果を出したい、長期の仕事に腰を据えたい、といった前を向いた言葉に置き換えると印象が変わります。独立中に苦労した点を聞かれたら、そこから何を学んだかまでをセットで話します。独立の経緯と再び組織を選ぶ理由を、一貫したストーリーとして語ると、説得力が増します。会社員時代を否定したり、フリーランスを卑下したりする話し方は必要ありません。面接では、独立の理由と組織を選ぶ理由を一つの流れで伝えます

入社時に必要な書類

入社が決まったら、いくつかの書類を用意します。

会社員として働いた経験がある人は、雇用保険被保険者証を求められます。あわせて、基礎年金番号がわかるものや、本人確認のための書類を準備します。フリーランス期間は給与ではないため、その期間の源泉徴収票は基本的にありません。健康保険と厚生年金は、入社の手続きで国民健康保険と国民年金から切り替わります。家族を扶養に入れている場合は、家族の情報がわかる書類も求められます。勤務先での加入手続きが終わっても、国民健康保険をやめる届け出は自分で市区町村におこなう必要があります。保険証の切り替え時期に空白が出ないよう、入社日と手続きの順番を勤務先に確認しておきます。必要な書類は勤務先の指示に沿って早めに集めると、手続きが滞りません。入社時は雇用保険被保険者証や年金の番号がわかる書類を準備します

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

転職活動でつまずきやすいのは、フリーランス期間の見せ方です。案件を羅列するだけだと、何ができる人かが伝わりません。担った役割と出した成果をセットで書くと、職務経歴がぐっと読みやすくなります。面接でも同じで、独立と再就職を一本の線でつなげて話せると、採用側も評価しやすくなります。書類は内定後に慌てないよう、早めに棚卸ししておくのがおすすめです。

フリーランスをやめるときの税金の切り替え

正社員になるときは、税金まわりの切り替えも必要です。廃業の届け出、就職した年の確定申告、住民税の納め方の3つを順に見ていきます。

廃業届と青色申告の取りやめ

フリーランスをやめるときは、税務署への届け出があります。

事業をやめたら、個人事業の開業・廃業等届出書を提出します。提出期限は、廃業の事実があった日から1か月以内です。

出典:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

青色申告をしていた場合は、所得税の青色申告の取りやめ届出書もあわせて出します。取りやめようとする年の翌年3月15日までが提出期限です。

出典:A1-10 所得税の青色申告の取りやめ手続|国税庁

提出は税務署の窓口のほか、e-Taxや郵送でもできます。消費税の課税事業者だった場合は、事業廃止届出書もあわせて必要になります。インボイス制度の登録をしていた人は、登録を取りやめる手続きについても確認しておきます。廃業届は1か月以内、青色申告の取りやめは翌年3月15日までと期限が違う点に注意します。フリーランスをやめたら、廃業届と青色申告の取りやめ届出書を税務署に提出します。開業・廃業の届出書や青色申告の手続きは開業届の出し方と青色申告の始め方で整理しています。

就職した年も確定申告が必要

正社員になった年は、確定申告が必要になります。

フリーランスとして働いた期間の事業所得は、就職後の給与とは別に、自分で申告します。就職先では年末に在籍していれば給与分の年末調整を受けられますが、その年の事業所得は年末調整の対象になりません。給与は年末調整、フリーランス期間の所得は確定申告、と分けて精算するのが基本です。就職した翌年の申告時期に、事業所得と給与所得を合わせて確定申告します。確定申告をすると、フリーランス期間に納めすぎた税金が戻ることもあります。報酬から源泉徴収されていた人や、経費を計上して所得が下がる人は、申告で還付を受けられる場合があります。確定申告は手間というだけでなく、払い過ぎを取り戻す機会にもなります。フリーランスから正社員になった年は、事業所得を自分で確定申告します。確定申告の要否や書類、手順はフリーランスの確定申告のやり方と必要書類で整理しています。

住民税の納め方が変わる

住民税は、フリーランスと会社員で納め方が変わります。

フリーランスのときは、自分で納める普通徴収でした。正社員になると、給与から天引きされる特別徴収に切り替わります。切り替えは勤務先の給与担当が手続きするため、相談しておきます。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、就職してしばらくは、フリーランス時代の所得に対する住民税を納めることになります。納め方が普通徴収のまま残る分があれば、二重に払わないよう勤務先と確認します。普通徴収の納付書がすでに手元にある分は、原則として自分で納め続けます。就職を機にまとめて特別徴収へ移したい場合は、勤務先の給与担当に相談します。住民税は就職すると普通徴収から特別徴収に切り替わります。住民税の金額や納め方の基本はフリーランスの住民税はいくら(会社員との違い)で整理しています。

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

税金の切り替えは、忘れても誰かが代わりにやってくれるものではありません。とくに廃業届と確定申告は自分の責任で進めます。注意したいのは、就職した年の確定申告です。給与は会社が年末調整しますが、その年のフリーランス分の所得は自分で申告しないと精算されません。廃業のタイミングで届け出と申告の予定をカレンダーに入れておくと、抜け漏れを防げます。

正社員に戻る前に整理する判断軸

手続きの全体像が見えたら、最後に戻るかどうかの判断です。正社員とフリーランスを比べる視点と、戻った後にまた独立する選択について整理します。

正社員とフリーランスを比べる

正社員とフリーランスは、優劣ではなく性質が違います。

項目正社員フリーランス
収入の安定性毎月の給与で安定しやすい案件しだいで変動する
働く自由度勤務時間や場所に制約がある自分で決めやすい
社会保険厚生年金と健康保険を会社が半分負担国民年金と国民健康保険を全額負担
税と経費給与所得控除が適用される経費を計上して所得を調整できる
向いている人安定した基盤で力を発揮したい人裁量を持って自分で設計したい人

表のすべてで一方が上ということはありません。社会保険は会社が半分を負担する正社員に分があり、働く時間の裁量はフリーランスに分があります。どちらが得かは、何を優先するかで変わります。自分がいま重く見ている項目を2つか3つ選ぶと、判断の軸が定まります。収入の安定を取るか、裁量の大きさを取るかという軸で見ると、自分に合うほうが見えてきます。正社員とフリーランスは、安定と裁量のどちらを優先するかで選び方が変わります。向き不向きの判断軸はフリーランスはやめたほうがいいかの判断軸で整理しています。

また独立する道も残る

正社員に戻ることは、フリーランスの終わりではありません。

組織で新しいスキルや人脈を得て、数年後にまた独立する人もいます。一度戻ったら戻れない、という一方通行の選択ではありません。正社員とフリーランスを行き来しながらキャリアを組み立てるという考え方もできます。いまの選択を最終決定だと重く考えすぎず、その時点で最も力を発揮できる場所を選ぶ、と捉えると動きやすくなります。正社員に戻った後に、もう一度独立する道も残されています

西村 裕介
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ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

働き方を一度決めたら変えられない、と思い込むと選択が重くなります。正社員に戻る判断は、フリーランスを手放すことではなく、いまの自分に合う環境を選び直すことです。組織で学んでまた独立する人も、独立を続ける人もいます。比較表で安定と裁量のどちらを今優先したいかを見極めれば、戻るか続けるかの答えは自然と絞れてきます。

働き方は選び直せる

フリーランスから正社員になる道は、不利でも特別でもなく、誰でも選べる選択肢です。最後に要点を整理します。

  • フリーランスから正社員への出戻りは不利にならず、経験は転職で武器になる
  • 職務経歴書は役割と成果で整理し、面接では独立と再就職の理由を一貫して語る
  • 入社時は雇用保険被保険者証や年金番号がわかる書類を用意する
  • やめるときは廃業届と青色申告の取りやめを出し、就職した年は確定申告する
  • 住民税は普通徴収から特別徴収に切り替わる
  • 正社員とフリーランスは安定と裁量のどちらを優先するかで選ぶ

最初の一歩は、これまでの案件を役割と成果の単位で書き出してみることです。職務経歴が整理できれば、転職活動も税金の手続きも具体的に動き出せます。働き方は一度決めたら変えられないものではなく、その時々で選び直せます。正社員に戻る選択も、また独立する選択も、同じ自分のキャリアの上にあると捉えてみてください。

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

フリーランスから正社員へ戻る相談で最初に伝えるのは、それは後退ではないということです。外で事業を回した経験は、組織のなかでも必ず生きます。やることは2つで、職務経歴を役割と成果で棚卸しすること、廃業届と確定申告など税金の手続きを段取りすることです。働き方は選び直せるものだと捉えれば、戻る判断も次の独立も、落ち着いて決められます。


※本記事は2026年6月時点の情報にもとづいて執筆しています。税金や社会保険の手続き、各種届出の期限は変更される場合があります。最新情報は国税庁・お住まいの自治体・勤務先の窓口でご確認ください。

西村 裕介
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西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)
正社員として働きながら、コンサルティングやメディア事業を手がける法人を経営し、AFP認定ファイナンシャルプランナーとして個人でも活動中。副業フリーランスの立場から、独立や副業を考える人に役立つ情報を発信している。
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