フリーランスに育休はある?出産と育児で使える公的支援を解説

フリーランスに育休はある?出産と育児で使える公的支援を解説
フリーランスの読みもの編集部
執筆
フリーランスの読みもの編集部
記事の執筆・編集を担当
西村 裕介
監修
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

フリーランスとして働きながら出産や育児を迎えるとき、気になるのが会社員のような育休や産休、その手当はあるのかという点です。結論を先に言うと、育児休業給付金や出産手当金は原則もらえません。ただ、フリーランスにも使える公的支援はあります。出産育児一時金や国民年金と国民健康保険の保険料免除、2026年10月に始まる育児期間の年金免除まで、何が使えて何を申請するのかを整理しました。

目次
  1. フリーランスに育休や産休はあるのか
  2. 出産でもらえるお金と保険料の免除
  3. 2026年10月に始まる育児期間の年金免除
  4. 出産前に準備しておきたいこと
  5. 制度を知って出産と育児に備えよう

フリーランスに育休や産休はあるのか

まず、会社員の育休や産休まわりの給付がフリーランスにあるのかを確認します。もらえる前提で計画を立てると、あとで資金の計算が狂います。

育児休業給付金と出産手当金は対象外

会社員が受け取る育児や出産の手当は、フリーランスには基本的に支給されません。

育児休業給付金は雇用保険の給付で、出産手当金は会社員が入る健康保険の給付です。フリーランスは雇用保険に加入できず、国民健康保険には出産手当金の仕組みがありません。育児休業給付金は雇用保険、出産手当金は会社員の健康保険の給付で、どちらもフリーランスは原則対象外です。会社員時代に受け取った経験があっても、独立後は受けられません。ただし、加入している保険によっては例外もあります。一部の国民健康保険組合では、独自に出産に関する手当を設けている場合があります。フリーランス向けの国保組合に入っている人は、出産でもらえる給付がないかを一度確認しておきます。会社を辞めて任意継続で健康保険を続けている場合は、条件しだいで出産手当金の対象になることもあります。フリーランスは、育児休業給付金と出産手当金を原則として受け取れません。雇用保険に入れないフリーランスの失業給付の扱いはフリーランスは失業保険をもらえるか(受給の条件と再就職手当)で整理しています。

フリーランスでも使える支援はある

もらえないで終わりではありません。フリーランスにも、形を変えた支援が用意されています。

出産で受け取れる一時金や、出産前後の保険料の免除など、申請すれば使える制度があります。育休手当がないから何も支えがない、ではなく、知って申請するかどうかで受け取れる額が変わります。支援は大きく分けて、出産でまとまったお金を受け取る一時金と、出産前後や育児期間に保険料を払わずに済む免除の2種類です。受け取る時期も手続きの窓口も違うため、順番に押さえていきます。フリーランスには手当の代わりに、一時金と保険料の免除という支援があると捉えると動きやすくなります。フリーランスにも、出産育児一時金や保険料の免除という使える支援があります

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

育休手当がもらえないと知ると気落ちするかもしれませんが、フリーランスには別の形の支援が用意されています。大事なのは、もらえないものを嘆くより、使えるものを取りこぼさないことです。出産が決まったら、まず何が申請できるかを書き出すところから始めると、準備の全体像が見えてきます。

出産でもらえるお金と保険料の免除

ここから具体的な制度です。出産でもらえる一時金と、出産前後に効く2つの保険料免除を順に見ていきます。

出産育児一時金を受け取れる

出産育児一時金は、フリーランスも受け取れます。

国民健康保険の加入者が出産したとき、子ども1人につき50万円が支給されます。令和5年4月に、それまでの42万円から引き上げられました。

出典:出産育児一時金等について|厚生労働省

対象になるのは妊娠85日以上の出産で、死産や流産の場合も含まれます。多くの場合、医療機関へ直接支払われる仕組みを使えるため、退院時にまとまった出産費用を立て替えずに済みます。直接支払の仕組みを使わないときは、出産費用をいったん自分で払い、あとから申請して受け取る方法もあります。どちらの受け取り方にするかは、出産する医療機関に確認しておくと手続きがスムーズです。出産育児一時金は子ども1人につき50万円で、フリーランスの国民健康保険でも受け取れるお金です。出産育児一時金は、子ども1人につき50万円を国民健康保険から受け取れます

国民年金の産前産後免除

出産の前後は、国民年金保険料が免除されます。

出産予定月の前月から4か月間、多胎妊娠なら3か月前から6か月間の国民年金保険料が免除されます。免除された期間は、保険料を納めたものとして老齢基礎年金の額に反映されます。

出典:国民年金保険料の産前産後期間の免除制度|日本年金機構

産前産後の免除は、払わずに済むうえに将来の年金も減らない点が特徴です。免除を受けるには届け出が必要で、出産予定日の6か月前から手続きできます。手続きは住んでいる市区町村の国民年金の窓口でおこないます。出産後の届け出もできるため、出し忘れに気づいたときは早めに申請します。国民年金は、産前産後の4か月分が免除され、年金額にも満額反映されます

国民健康保険の産前産後軽減

国民健康保険にも、産前産後の軽減があります。

令和6年1月から、出産する加入者の産前産後期間相当分として、所得割と均等割が軽減されます。対象は出産予定月の前月から4か月相当分、多胎妊娠なら3か月前から6か月相当分です。

出典:国民健康保険料の産前産後期間相当分が免除されます。|葛飾区公式サイト

対象になるのは妊娠85日以上の出産で、死産や流産も含まれます。国民健康保険は市区町村が運営するため、届け出の要否や細かい扱いは自治体で異なります。国民年金の産前産後免除とは別の手続きになるため、年金と国民健康保険の両方を市区町村の窓口でまとめて確認しておくと取りこぼしません。国民年金だけでなく、国民健康保険も産前産後は保険料が軽くなるようになりました。国民健康保険も、2024年から産前産後の保険料が軽減されます。会社員とフリーランスの社会保険の違いや国保の負担額はフリーランスの社会保険と年収別の負担額で整理しています。

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

出産まわりのお金は、申請しないと受け取れないものがほとんどです。出産育児一時金は直接支払制度を使えば窓口での負担が軽くなり、年金と国民健康保険の産前産後免除は、払わずに済むうえ将来の年金も守られます。出産予定がわかったら、年金事務所と市区町村で手続きの時期を確認しておくと、取りこぼしを防げます。

2026年10月に始まる育児期間の年金免除

2026年10月から、フリーランスにとって大きな新制度が始まります。出産前後だけでなく、育児期間の国民年金保険料も免除されるようになります。子育て期間の保険料の負担という、会社員との制度の差が、また一つ縮まることになります。

子が1歳まで国民年金が免除される

新しい育児免除では、子どもが1歳になるまでの国民年金保険料が免除されます。

令和8年(2026年)10月に始まる制度で、国民年金第1号被保険者が対象です。実の父や養父母は子の出生から1歳の誕生日の前月まで最大12か月、実母は産前産後の免除に続く形で最大9か月が免除されます。所得に関係なく免除され、免除期間は老齢基礎年金に満額反映されます。

出典:令和8年(2026年)10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります!|日本年金機構

会社員が入る厚生年金には、以前から育児休業中の保険料免除があります。今回の育児免除は、同じような支援をフリーランスなど国民年金の加入者にも広げるものです。これまで子育て期間の保険料は自分で全額納める必要がありましたが、新制度で負担が大きく軽くなります。これまで産前産後の4か月に限られていた年金の免除が、育児期間まで広がります。育児期間の免除は、子が1歳になるまで国民年金保険料がかからず将来の年金も減らない制度です。2026年10月から、子が1歳になるまでの国民年金保険料が免除されます。国民年金の保険料や免除、上乗せ制度はフリーランスの年金と上乗せ制度の選び方で整理しています。

父母とも対象で申請して使う

育児免除は、父母のどちらも使えます。

母親だけでなく父親も対象で、共働きで子育てをするフリーランスの世帯の支えになります。免除は自動では始まらず、申請が必要です。2026年10月より前の期間は対象にならないため、それまでは産前産後の免除で対応します。免除期間中も、付加保険料は納めることができます。申請の窓口や必要書類は、施行に合わせて案内される見込みです。出産や育児のタイミングが2026年10月をまたぐ場合は、産前産後免除と育児免除をどうつなぐかを、年金事務所や市区町村で確認しておきます。父母とも対象で、申請してはじめて免除を受けられる点を押さえておきます。育児期間の年金免除は父母とも対象で、申請して使う制度です

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

2026年10月の育児免除は、フリーランスの子育てを後押しする大きな制度です。これまで産前産後の数か月に限られていた年金の免除が、子が1歳になるまで広がります。父親も使える点を見逃せません。施行後は申請を忘れずに、それより前の期間は産前産後免除でつなぐ、と覚えておくと無駄がありません。

出産前に準備しておきたいこと

制度の全体像が見えたら、出産前の準備です。会社員のような所得補償がない分、休む時期に向けた備えは早めに動くほど効きます。

収入が減る分を先に備える

出産や育児で仕事を休む時期は、収入が落ち込みます。

フリーランスには育休手当のような所得補償がないため、休む分の収入は自分で準備します。出産前のうちに生活防衛資金を積んでおくと、休む時期を落ち着いて過ごせます。掛金が所得控除になる小規模企業共済を、将来への備えとして検討する選択肢もあります。所得補償がない分、休む前に生活費の数か月分を現金で用意しておくと支えになります。仕事の引き継ぎや、休む期間の見通しも早めに立てておきます。取引先には、休む時期と復帰の見通しを早めに伝えておくと、仕事を再開しやすくなります。すべての案件を手放すのではなく、量を絞って続ける形も選べます。休む間の固定費を見直しておくと、用意しておきたい備えの額も具体的になります。収入が減る時期の備えは、出産前に生活防衛資金を積むところから始めます

保育園の利用を調べておく

仕事に戻ることを考えるなら、保育園の準備も出産前から始めます。

フリーランスも、就労の状況を示す書類で保育の必要性を申請できます。開業届の控えや確定申告書、就労証明などが使われます。必要な書類や選考の点数の付き方は自治体で違うため、出産前から市区町村の窓口で調べておきます。認可保育園に入りにくい時期は、一時保育や認可外の保育園を組み合わせる方法もあります。地域によって入りやすさが違うため、復帰したい時期から逆算して情報を集めます。保育園の利用は、会社員でなくても就労を示す書類で申請できる仕組みです。保育園は、就労を示す書類をそろえればフリーランスでも申請できます

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

フリーランスの出産で一番効くのは、早めの準備です。手当で穴埋めできない分、休む時期の生活費を先に用意しておくと、仕事を一時的に手放す判断がしやすくなります。保育園も、出産前から情報を集めた人ほど復帰の段取りがスムーズです。お金と保育の2つを、出産前のうちに動かしておくのがおすすめです。

制度を知って出産と育児に備えよう

フリーランスの出産と育児は、会社員と同じ手当がない代わりに、知って申請すれば使える支援があります。制度は近年だけでも、出産育児一時金の増額や国民健康保険の産前産後軽減、2026年10月の育児免除と、フリーランスの子育てを支える方向に広がっています。最後に要点を整理します。

  • 育児休業給付金と出産手当金は、フリーランスは原則もらえない
  • 出産育児一時金は子ども1人につき50万円を受け取れる
  • 国民年金は産前産後の4か月分が免除され、年金額に満額反映される
  • 国民健康保険も2024年から産前産後の保険料が軽減される
  • 2026年10月から、子が1歳になるまでの国民年金保険料が父母とも免除される
  • 所得補償がない分、収入減への備えと保育園の準備は出産前から動く

最初の一歩は、出産予定がわかった段階で、住んでいる市区町村と年金事務所に使える制度を確認することです。一時金や免除の多くは、申請してはじめて受け取れます。出産は予定がわかってから動ける時間があるため、早めの確認が、そのまま受け取れる額につながります。会社員の手当がないことを前提に、使える支援を早めに押さえておけば、出産と育児に向けた見通しが立てやすくなります。

西村 裕介
西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)

フリーランスの育休まわりで惜しいのは、使えるはずの制度を知らずに申請しそびれることです。出産育児一時金、産前産後の免除、2026年10月からの育児免除と、支援はむしろ増えています。やることはシンプルで、出産が決まったら市区町村と年金事務所に確認し、申請の時期をカレンダーに入れることです。手当の有無で迷うより、使える制度を順に押さえていきましょう。


※本記事は2026年6月時点の情報にもとづいて執筆しています。給付額や保険料の免除制度の内容は変更される場合があります。国民健康保険は市区町村によって取り扱いが異なります。最新情報は厚生労働省・日本年金機構・お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

西村 裕介
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西村 裕介
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)
正社員として働きながら、コンサルティングやメディア事業を手がける法人を経営し、AFP認定ファイナンシャルプランナーとして個人でも活動中。副業フリーランスの立場から、独立や副業を考える人に役立つ情報を発信している。
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