会社員のころは、額面と手取りの差をあまり意識しなかったかもしれません。フリーランスになると、売上がそのまま使えるお金にはならず、税金と社会保険を自分で納めます。売上から何がどれだけ引かれ、手取りはいくら残るのか。計算の手順と年収別の早見表で、自分の数字に当てはめられるように整理します。手取りを増やすために動かせる部分まで見ていきます。
フリーランスの手取りの計算方法
フリーランスの手取りは、売上から経費と税金、社会保険料を順に引いて残るお金です。本記事の概算では、手取りはおおむね売上の6割前後ですが、経費や所得によって大きく変わります。まずは引かれる順番を4つのステップで押さえます。
売上から経費を引いて所得を出す
最初に、売上から事業に使った経費を引きます。売上から経費を引いた金額が、事業所得です。
さらに青色申告をしていれば、青色申告特別控除として最大65万円を所得から引けます。たとえば売上600万円で経費120万円なら、利益は480万円です。青色申告特別控除65万円を引くと、事業所得は415万円になります。売上から経費と青色申告特別控除を引いた額が、税金の計算のもとになります。
所得から所得控除を引く
事業所得から、次に所得控除を引きます。所得控除とは、生活の事情に応じて税負担を軽くする仕組みで、基礎控除や社会保険料控除などがあります。
納めた国民健康保険と国民年金の保険料は、全額が社会保険料控除になります。
基礎控除は、2025年度の税制改正で見直され、合計所得に応じて58万円から95万円に変わりました。令和7年分と令和8年分は段階的な金額で、所得が増えるほど控除額は小さくなります。
出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
事業所得から所得控除を引いた残りが、税率をかける課税所得になります。
所得税と住民税を計算する
課税所得が決まると、所得税は速算表で計算できます。税率は課税所得に応じて5%から45%の7段階で、税率をかけてから一定額を引きます。あわせて、所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかります。
住民税は、所得割が課税所得の10%で、これに均等割が加わります。均等割は森林環境税とあわせておおむね5,000円です。
住民税の納め方や会社員との違いはフリーランスの住民税はいくら(会社員との違い)で整理しています。
所得税は所得が高い部分ほど税率が上がり、住民税はおおむね一定の割合です。所得税と住民税は、課税所得をもとに別々に計算します。
国民健康保険と国民年金を引く
税金とは別に、社会保険料も自分で納めます。フリーランスが入るのは、国民健康保険と国民年金です。
国民健康保険と国民年金の年収別の負担額はフリーランスの社会保険と年収別の負担額で整理しています。
国民年金の保険料は、令和8年度で月17,920円です。1年分では215,040円になります。
国民健康保険の保険料は、前年の所得をもとに計算され、自治体によって料率が異なります。同じ所得でも住む地域で金額が変わるため、正確な額は自分の市区町村で確認します。手取りを出すには、税金に加えて国民健康保険と国民年金を引く必要があります。

手取りの計算は、売上から経費、所得控除、税金、社会保険の順に引くだけで、流れ自体は込み入っていません。つまずきやすいのは、基礎控除が2025年に変わった点と、国民健康保険が自治体で違う点です。まずは直近の売上と経費を書き出し、事業所得を出すところから始めると、全体の見当がつきます。
年収600万円の手取りを計算してみる
計算の流れを、売上600万円のケースで通してみます。前提は、経費120万円、青色申告特別控除65万円、単身で扶養なし、40歳未満とします。国民健康保険は東京23区のおおよその料率で見積もった概算です。
税金はいくら引かれるか
売上600万円から経費120万円を引いた利益は480万円、青色申告特別控除65万円を引いた事業所得は415万円です。事業所得から社会保険料控除の約67万円と基礎控除68万円を引くと、課税所得は約281万円になります。
課税所得281万円にかかる所得税は、復興特別所得税を含めて約19万円です。住民税は所得割と均等割をあわせて約31万円になります。年収600万円のケースでは、所得税と住民税で約50万円が引かれます。
社会保険はいくら引かれるか
社会保険料は、国民年金と国民健康保険の合計です。国民年金は1年で215,040円、国民健康保険は所得から計算して約45万円と見積もりました。
あわせると社会保険料は約67万円です。税金の約50万円と社会保険の約67万円を引くと、手取りは約364万円、月あたり約30万円になります。売上600万円のフリーランスの手取りは、概算で約364万円になります。

同じ売上600万円でも、経費や住む地域、加入している控除によって手取りは前後します。今回の概算はあくまで一例で、経費が多ければ課税所得が下がり、手取りは増えます。自分のケースを知りたいときは、確定申告ソフトや自治体の試算を使うと、より実態に近い数字が出せます。
年収別フリーランスの手取り早見表
年収別の手取りの目安を早見表にまとめます。前提をそろえた概算のため、実際の金額は前後します。
早見表の前提条件
早見表は、次の前提で計算した概算です。
- 経費は売上の20%とする
- 青色申告特別控除65万円を適用する
- 単身で扶養家族なし、40歳未満とする
- 国民健康保険は東京23区のおおよその料率で見積もる
- 個人事業税と消費税は含めない
基礎控除は2025年度改正後の段階的な金額を使っています。料率が違う地域や、扶養がある場合は金額が変わります。早見表は前提をそろえた目安で、正確な額は自分の数字での計算が必要です。
| 年収(売上) | 経費 | 税金と社会保険 | 手取り | 手取り率 | 月の手取り |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 60万円 | 約53万円 | 約187万円 | 約62% | 約15.5万円 |
| 500万円 | 100万円 | 約92万円 | 約308万円 | 約62% | 約25.7万円 |
| 600万円 | 120万円 | 約116万円 | 約364万円 | 約61% | 約30.0万円 |
| 700万円 | 140万円 | 約142万円 | 約418万円 | 約60% | 約34.8万円 |
| 1,000万円 | 200万円 | 約234万円 | 約566万円 | 約57% | 約47.0万円 |
売上が増えるほど、手取り率は下がります。所得税が所得の高い部分ほど高い税率になるためです。
会社員の手取りとの違い
同じ年収でも、会社員とフリーランスでは手取りの出方が違います。会社員は社会保険料を会社と折半するため、額面に対する手取りが比較的多く残ります。
一方でフリーランスは社会保険を全額自分で負担しますが、経費や青色申告特別控除で課税所得を下げられるという会社員にはない余地があります。手取りだけでなく、働き方や保障の違いまで含めた比較は、別の視点でも見る必要があります。会社員は折半で守られ、フリーランスは経費と控除で調整できるという違いがあります。
働き方・税金・保障まで含めた会社員との比較はフリーランスと会社員の違い(収入や税金の比較)で整理しています。

早見表はあくまで同じ前提でそろえた目安です。実際には、経費の多い職種や、iDeCoなどの控除を活用している人ほど手取りは増えます。逆に、国民健康保険料の高い地域や扶養の状況で下がることもあります。自分の手取り率が早見表とずれていても、前提が違うだけだと考えると落ち着いて見られます。
フリーランスが手取りを増やす方法
手取りは、売上を増やすだけでなく、課税所得を下げることでも増やせます。動かせるレバーは大きく2つです。
経費と青色申告で所得を下げる
事業に必要な支出は、漏れなく経費に計上します。経費が増えれば事業所得が下がり、税金と国民健康保険料の両方が軽くなります。
経費にできる費用の範囲や勘定科目はフリーランスの経費はどこまで(一覧と判断基準)で整理しています。
さらに青色申告をすると、最大65万円の特別控除に加え、赤字を翌年以降に繰り越せる利点もあります。白色申告にはない節税の幅が青色申告にはあるため、手取りを意識するなら青色申告が基本になります。経費の計上と青色申告は、手取りを増やす土台になります。
控除や共済を使って残す
所得控除を増やすことも、手取りを残す方法です。小規模企業共済やiDeCo、国民年金基金などは、掛けたお金がそのまま所得控除になります。
iDeCoや国民年金基金などの上乗せ制度の選び方はフリーランスの年金と上乗せ制度の選び方で整理しています。
掛金は将来の備えをしながら、今の税負担を下げられる仕組みです。掛金の上限や受け取り方には条件があるため、加入前に公式情報で確認します。共済や年金の掛金は、備えと節税を兼ねて手取りを守ります。

手取りを増やすと聞くと売上アップを思い浮かべますが、課税所得を下げる工夫も同じくらい効きます。特に小規模企業共済やiDeCoは、将来の自分への積み立てが今の節税になる点で、フリーランスと相性のよい制度です。まずは青色申告と、掛金が控除になる制度を1つ始めることから検討すると、来年の手取りが変わります。
自分の売上で手取りを把握して動こう
フリーランスの手取りは、売上から経費と税金、社会保険を引いた残りです。最後に要点を整理します。
- 手取りは、売上から経費と所得控除、税金、社会保険を引いて求める
- 所得税は5〜45%の累進、住民税は所得割10%で計算する
- 国民年金は令和8年度で月17,920円、国民健康保険は自治体で変わる
- 早見表は前提をそろえた目安で、手取り率は売上が増えるほど下がる
- 経費と青色申告、控除や共済で課税所得を下げると手取りが増える
まずは直近の売上と経費を当てはめて、自分の事業所得を出してみてください。そこから所得控除を引けば、おおよその手取りが見えてきます。

手取りの計算は、一度自分の数字で通してみると、ぐっと身近になります。売上の額面ではなく、税金と社会保険を引いた後の手取りで生活と事業を設計することが、フリーランスのお金の土台です。まずは今年の見込み売上で概算し、来年は青色申告や控除でどこまで手取りを伸ばせるかを考えてみると、打ち手が具体的になります。
※本記事の内容は2026年6月時点の情報にもとづいて執筆しています。税率や保険料、控除額などの制度は変更される場合があり、国民健康保険料は自治体によって異なります。最新情報や正確な金額は国税庁・日本年金機構・お住まいの市区町村の公式サイトでご確認ください。
